「虫の音」

今日は徳島まで鉄人と息子、そしてかみさんとで撮影に出かけていた。夕方仕事が終わって広島までの帰り道でのことである。
広島〜徳島間を車で往復すると約600キロ。一度の給油では足りず、徳島の板野のインター手前にあるガソリンスタンドで必ず給油をする。
そのスタンドはセルフではない。給油をスタッフに頼んだ後鉄人はトイレに行った。そしてしばらくして車に戻ってみると、鉄人の車の周りに人が集まっていたのだ。
「何事?」
給油の間にタイヤの空気圧を測っていたスタンドのスタッフのひとりが、
「左側後輪のタイヤの空気圧が足りません。パンクかもしれませんね。」
これから高速に入る。パンクなら一大事である。早速パンクかどうか調べてもらった。数分後・・・。
「やはりパンクでした。釘が刺さってました。どうしましょう?」
どうしましょうって、直してもらいたいに決まっている。
「修理をお願いします。」
10分くらい掛かると言う。10分なら短いくらいだ。することもなく待っていた。すると・・・。
「ラジエター液が減ってます。エンジンが焼き付くかもしれません。どうします?」
「じゃあそれもお願いします。」
かみさんはガソスタの商品は値段が高目なので渋っていたが、鉄人、「ポテト」も頼んでしまったのである。
ちょうど10分後、タイヤは修理を完了した。
もしガソスタがセルフだったらどうなっていただろう。もしガソスタのスタッフが空気圧を調べなかったらどうなっていただろう。その後すぐに高速に乗ったのである。今こうやってブログを書いていないかもしれない。後で考えたらゾッとした。
たった数センチの小さな釘が、鉄人家族の運命を大きく変えていたかもしれないのである。人生は1秒先のことさえ分からない不確かなものなのである。長い人生で積み上げて来たものが、ほんの些細なことで一瞬にして消えてしまうこともよくあることだ。考えてみれば人生など極めて儚いものなのではないか。
今回はたまたまパンクを見つけることが出来た。でも次は分からない。鉄人は、有人のガソスタを結構利用する。
「ポテト」も押しに弱いのでつい買ってしまう。でもそれで良いとも思っているのだ。
鉄人は車に全く興味もないし知識もない。そんな人間が自ら進んで車の点検やメンテをするだろうか。幾らかのお金を惜しんで、カー用品のお店に商品を買いにいくだろうか。否である。
有人のガソスタで定期的に簡単に点検してもらったり「ポテト」を買っていた方が、鉄人みたいな人間は安心なのである。
今回は修理と商品の購入で計7000円掛かった。パンクを知らないままの自分たちのその後をシュミレーションしてみたら、その7000円はあまりにも安価なものに見えてくるのである。
ただ、かみさんは「ポテト」がお好きではない様だ。