2010年01月30日

ある別れ。

Photo 里山に咲く
satoyamanisaku.jpg

昨日の朝、事務所で仕事をしていたら、一本の電話がかかって来た。 
 
日頃大変お世話になっているカメラマンの方からの電話であった。また仕事の依頼かなと思っていたら、受話器の向こうから聞こえて来た言葉は意外なものだった。

「橋本さん。私、今日で会社を辞めることになりました」

「えっ?」

「急で申し訳ないんですけど、そういうことで。まあ色々お世 話になりました」

後は儀礼的なお礼の言葉の交換で、電話を切ったのだが、あまりに急な話しだった。

そのカメラマンの方は、鉄人より十歳ほどご年配で、印刷会社に勤務され、広告写真を撮られていた。

仕事が社内でこなせないくらい忙しくなると、鉄人に撮影の依頼をされていた。

写真の腕はピカイチ。定年を過ぎても会社が、その方を引き止め続けていたことでも分る。人柄も温厚で、スタッフからも慕われていた方だ。

その方が、突然退職すると言う。電話口でお別れのご挨拶をしたのだが、やはりそうはいかない。

会ってちゃんと最後のお礼をすべきだ。時計を見たら十時半。まだ一日は始まったばかりだ。でもその方が会社に何時までいるかも分らない。急がなきゃ。

取りあえず作業を中断して、息子を連れ急いでその方の会社に向かった。

有難いことに、その方はいらした。仕事中だったので廊下でのご挨拶になった。

辞める理由をあらためて尋ねた。

「ちょっと疲れました」それが答えだった。

鉄人は不覚にも泣きたくなった。

鉄人はこういうのに実に弱い。日頃冷静でいろとか執着から離れろとか、仏教話を偉そうに言っているが、本当はウエットでリリカルな人間なのだ。

泣きたくなった理由はふたつある。ひとつはもちろん目の前にいる人間に対しての惜別の情。もうひとつは、すべては移り変わるという「無常感」にである。

「またお会いしましょう」人は別れる時に、必ずといっていいほどこの言葉を使う。しかし現役を離れた人間と、再び出会うことは稀だ。

これが最後かもしれないのである。そう思うと、つい涙が出そうになったのだ。

その方の職業カメラマンとしての人生は終わった。しかし、と同時に、職業カメラマンではないその方の人生は始まったのである。

始まりがあれば必ず終わりがある。また終わりがないと始まりもないのである。

その方はこれからも写真は撮り続けられるだろう。プロとしての役目を終えたカメラマンが、どんな写真を撮るか。

その素晴らしいスキルを、趣味の世界でも存分に活かしていただきたいと、こころから願うばかりである。
posted by masa at 22:20| Comment(2) | 撮影日記
この記事へのコメント
鉄人より10歳上といえば65歳前後?『疲れました』その言葉がなんとなく判るようなきがします。新たな出発にエールを送りたいですね。
Posted by いそはち at 2010年01月30日 23:40
いそはち様 いらっしゃいませ。

何時もコメントありがとうございます。

今鉄人が52歳ですので、たぶん62〜63歳ぐらいでしょうか。
政治家でしたら現役バリバリの年齢ですが、体力勝負のカメラマンの世界では、やはり多少お疲れになったのでしょう。

「サヨナラだけが人生だ」とよく言われますが、「はじめまして」というのも人生。

お名前もお顔も存じ上げませんが、いそはち様とこのようにして「ご縁」が出来たのも、人生の妙味だと感じております。
Posted by 鉄人 at 2010年01月31日 00:41
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