
第一弾
少し前、鉄人が撮影した広告写真が新聞に載った。上に出ている写真である。その日の朝、鉄人は何時もの様に新聞を読んでいた。この写真が載っているページも読んでいた。にも関わらず、この写真に全く気がついていなかったのだ。
結構大きな扱いなんだけどね。後でかみさんに言われて初めて気がつく。何処を観てたんだろう。
第二弾
広大病院での出来事。その日、広大病院で医師の撮影があった。しばらくぶりで行ってみたら随分様子が違う。本館の建物が新しくなっているのだ。ちょっと離れた駐車場に車を停めたのだが、よく見ると本館の建物の横に駐車場がある。撮影場所は本館の中なので、あっちの駐車場が建物に随分近い様だ。
鉄人、一旦停めていた駐車場を出て、その建物の近くにある駐車場に向かった。着いてみると満車だ。もう少し奥にある駐車場に向かう。ここも満車である。更に奥にある駐車場まで行ってやっと停められた。
停められたのは良いのだが、最初の駐車場から建物までの距離より倍以上あった。重い撮影機材を引きずりながらトボトボと撮影場所である本館まで歩く羽目になったのである。
第三弾
あるパン工場での出来事。パンの撮影の為に工場の駐車場に車を停めた鉄人は、何時もの様に撮影機材を車から出していた。ところがストロボが入っているバッグが見当たらない。車の周りを見渡しても無い。そんなはずはないのだ。撮影の準備は前日の夜に行い念入りに確認もしている。
でも無い・・・ものは無い。冷や汗が全身から出てくる。ストロボはカメラの次に大事なものだ。ストロボなくしては商品写真は撮れない。今日のクライアントは新しい取引先で信用に関わる。どうしよう。まず家に電話し息子にそのことを伝える。そしてストロボを急いで持ってくる様に頼む。
まずいことにそのときの撮影場所は我が家から一時間もかかる場所であった。渋る息子。だがとやかく言っている場合ではないので、何とか持ってくる様に頼んだ。ところがである。その肝心のストロボがスタジオに見当たらないらしいのだ。
「???何で無い?」。そのときである。一緒に来ていたかみさんが何やら黒いバッグを抱えてこちらに向かってくるではないか。そう、ストロボが入ったバッグである。
実はその撮影を依頼していたクライアントも来ていて、親切にも鉄人のバッグを撮影場所まで先に持っていってくれていたのである。
そのことを全く知らなかった鉄人は顔面蒼白、茫然自失、冷汗一斗になったという訳である。ストロボがあって良かったのだが、この事件の動揺は撮影が始まってもしばらく続いた。本当に心臓に悪い。
第四弾
今度はかみさんが主役である。ある仕事でモデルさんを撮影することになった。背景にキレイな景色を持ってきたいというクライアントの希望で、紅葉が真っ盛りの場所が選ばれていた。
行ってみたら確かに紅葉が見事な渓谷で、真ん中に吊り橋が架かっている。吊り橋を渡ったところに景色がキレイな場所があるというのでその吊り橋を渡ることにした。
そのとき想定外のことが起きたのである。かみさんが吊り橋を渡れないのである。鉄人のかみさんは高所恐怖症だったのだ。
まさに一歩たりとも進めない。まったくのお手上げ状態である。仕方が無いので鉄人とモデルさんふたりで吊り橋の向こうで撮影することにした。レフ板持ちで連れてきたのにこれじゃ意味が無い。考えてみれば、かみさんは歩道橋を渡るのがリミットだったのである。